KYRGYZSTAN キルギス


第2位作品

  「キルギスの社会問題―花嫁泥棒」

キルギス国立大学 3年生

アタハノフ・アザット

 

  私がこのテーマを選んだのは、皆さんに、特にキルギスに来ている外国人に、花嫁泥棒の本当の意味を説明したいからです。花嫁泥棒と言うと、外国人は野蛮な習慣だと思って、キルギスのことも怖い国だと思うかもしれません。でも、キルギスにも独自の伝統と文化があります。本当に伝統的な花嫁泥棒はとてもロマンチックで素敵なことだと、皆さんに説明したいです。

 昔、貧しい家の男性がお金持ちの家の女性を好きになりましたが、彼女の両親は結婚に反対でした。なぜなら彼らは娘をお金持ちの男性と結婚させたかったからです。どうしても彼女と結婚したいその男性は、彼女と話し合い、彼女をお金持ちの家から盗み出し、自分の家に連れて帰りました。それ以来、花嫁泥棒はキルギスの伝統になりました。

 今でも花嫁泥棒は形式的に行われます。男性は女性と前もって話し合った上で彼女を盗みますから、彼らは一緒に散歩するように笑いながら男性の家へ行きます。彼らはお互いに愛し合っていますから、この花嫁泥棒は平和に行われます。

 ところが、その伝統を誤解して、本当に女性を誘拐する人がいます。これは民族の伝統をよく知らない街の若者の間で行われることが多いです。

 例えば、こんな事件がありました。ある男性が結婚相手を探していました。初めて会った女性を外見だけで気に入って、彼女を盗みました。彼は彼女に何の相談もしないで、彼女が道を歩いていた時、無理矢理車に押し込みました。途中で彼女は何回も抵抗しましたが、男性は彼女を黙らせて、家に連れて帰りました。家に着いた後も、彼女はその男性と結婚したくないと言って、ずっと泣いていましたが、男性の親類が皆で彼女に花嫁衣裳を着せ、スカーフを被ぶせ、無理矢理結婚させてしまいました。彼女には本当は恋人がいました。だから好きでもない男性と結婚したくなかったのです。しかし、伝統には従わなければならないと男性の家族から言われ、諦めてその男性と結婚したのです。

 彼女を物のように盗んだ男性とその家族は、結婚した後も彼女を物のように扱いました。彼女は実家に帰りたいと何度も頼みましたが、男性とその家族は彼女を家に閉じ込めたまま解放しませんでした。その女性は夫とその家族の残酷な待遇に我慢できずに、とうとう首をくくりました。

 泥棒と言う言葉の意味は、誰か別の人から何か者を盗むことです。しかし、女性は物ではありません。女性も人間ですから、自分の自由な考え方があります。人としての尊厳があります。男性は女性の権利や人格、意志を尊重しなければなりません。キルギスの花嫁泥棒は、貧しくても愛し合う若い男女が、両親や親類に反対されても、自分たちの意志で自由に結婚するために行うことです。女性を奴隷にするために盗むのではありません。ですから男性は女性を盗む前に、その女性を幸わせにできるかどうか、将来の生活についてちゃんと考えたほうがいいです。

 私は、伝統にしたがって正しく行われる花嫁泥棒には賛成です。なぜならこの伝統は、キルギスが本来男性と女性が平等で自由な社会だと言う証拠だからです。

 私もいつか娘の父親になるかもしれません。でも私は娘が選んだ男性に盗まれるなら、その結婚に反対しません。それが娘にとって一番幸わせだと思うからです。

 私はこの花嫁泥棒と言うキルギスの伝統が現代の男女同権の考え方と矛盾しないで、正しく続けられることを望んでいます。




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