KYRGYZSTAN キルギス


日本大使館特別賞作品

子供たちのために私ができること

オシュ国立大学 4年

クルナザロワ・トトゥクシュ

 

 毎日、アイベックちゃんは窓からきれいな服装をしてお菓子とおもちゃを持った子供たちを連れている両親たちをじっと見つめていました。見ているとき、彼は「とても幸せな子供たちだなぁ」とうらやましく思いました。時々やんちゃをしてお母さんの言うことを聞かない子供を見ると、アイベックちゃんは「ぼくにお母さんがいたら、お母さんに対してそのようにはふるまわないのに・・・」と思って怒っていました。ぼくにお母さんがいたら、お母さんの言うことをよく聞くのに・・・と思いました。彼は自分の両親が誰だかわかりませんでした。孤児院に入って、もう7年になります。つまり、生まれてからずっとそこに住んでいました。子供たちはみんな子供なのに悲しそうな目で、誰かを待っているように、そして希望がやってくるのを待っているように、窓から外を見ていることが多かったです。孤児院の庭に見知らぬ人が来ると、子供たちは心の中で「あの人は私のためにやってきたんじゃないか」と思って、大きい希望を持って見ていました。

 孤児院の生活は何も問題がないように見えます。でもどうしても何かが足りませんでした。足りないものは、何よりも大切な親の愛撫と配慮でしょう。そこの保母さんはお母さんのようにいろいろなことをしてくれました。でも、アイベックちゃんはその中のヌルグルという保母さんがまったく好きではありませんでした。子供たちはみんな彼女を怖がっていました。ヌルグルは子供たちに荒く当たって、いつも子供たちを「おい、みなしご」と呼んで「あなたたちは将来何の役にも立つまい。殺されても誰も探さないだろう」と悪い言葉を言って、罵っていました。時々、子供たちをなぐったこともありました。

 ある日アイベックちゃんはいつものように窓を開け、窓の敷居に腰掛けて外を見ていました。そのとき、ドアを開けてヌルグルが入ってきました。怖くて、驚いたアイベックちゃんは急いで敷居から降りようとしたときに手が窓ガラスに触れて、窓ガラスが割れてしまいました。とても怖くなって何も考えないで、外に走って出ました。アイベックちゃんはただ、走り続けました。どうしたらいいかわからなくて、泣きながら歩きました。そして、ベンチのところまで来て、座りました。

「お母さん、あなたは今どこにいますか。私は一人ぼっちになってしまいました。私を連れて行ってください」

とお願いしました。泣いたので疲れてベンチで寝入ってしまいました。ぐっすり眠ってしまいましたので人々のざわめきで目を覚ましたとき、太陽はもう昇っていました。近くを歩いている人たちは彼に注意しませんでした。彼はおなかがすいていることに気がつきました。近くの食堂から、食べ物の匂いがしてきました。がまんできなくて食堂に入ってしまいました。とてもおなかがすいていたので

「誰か、パン一切れでもくれないかなぁ」と思っていました。そのとき食堂で働いていた人が彼を見て

「あそこの浮浪者は何をしているんだ。泥棒だ」

と言って、彼の首根っこをつかんで外へ引っ張り出しまして、

「あっちへ行け、二度と来るんじゃない」

と言って追い出しました。「不幸な人にはいつも運が向かない」という言葉は本当でした。今まで、そのようなことがたくさんありましたが、こんなにいじめられたことはなかったので、アイベックちゃんはとてもむずかしい情態に陥ってしまいました。彼はさめざめと泣きました。彼は人が嫌いになりました。孤児院にいるとき、窓からかばんを持ったインテリの人を見て「大人になったら、あの人のようになりたいなぁ」と思っていましたが、周りの大人たちの態度がそのあこがれをこわしました。すべての人は彼にとって乱暴で冷たく、見かけはいいが心の中はきたないように感じました。そして、アイベックちゃんは初めて盗みをしてしまいました。それから、そのことはだんだんくせになっていきました。無邪気で、誰にも悪いことをすることを考えない、情け深いアイベックちゃんは意地の悪い、騙りになってしまいました。

 これはアイベックという人の子供の頃の本当の話です。しかし、彼は別の人生を歩む可能性もありました。誰かが彼に正しい道を示せば、多分、すぐれた人になったと思います。でも、このアイベックのような人は大勢います。

 しかし、子供たちは将来大人になります。子供たちは将来の指導者や学者などになるのです。そうだったら、子供のために何することができるでしょうか。将来彼らがすぐれた人になるために、そして、アイベックのような人生を繰り返させないために、何ができるでしょうか。私は子供も大人と同じように正当に丁寧に扱わなければならないと思います。




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