KYRGYZSTAN キルギス


第6位作品

キルギスの伝統的スポーツ

キルギス共和国・日本人材開発センター 4年

ティニスタノワ・ジャニル

 

伝統的スポーツはその国の文化の一つとして、国の習慣や特徴、歴史を表していると言われています。確かにそうだと思います。

 キルギスは以前遊牧民族だったので子供は小さい頃から馬に乗って成長したのは当然のことです。そして、馬に乗る技を磨くことはただの遊びではなくて、民族の安全を保障するためにも重要でした。祖母の話によると、結婚式や出産祝いくらいの華やかなイベントでは必ず「コックビョリュ」とか「キズクーマイ」とか「アットチャビシュ」というスポーツの試合が行われたそうです。これらのスポーツはそれほど盛んなスポーツで、皆に愛されていました。父が初めて私を「コックビョリュ」の試合に連れて行ってくれたのは私が五歳のころでした。参加者が皆、大声を出して、夢中でやっていたので、とても怖かった思い出があります。「コックビョリュ」というのは「青い狼」という意味で元々キルギスのスポーツです。けれども、賭け事の対象として周りの国々でも行われるようになり、大変人気を呼びました。

 「コックビョリュ」の発祥に関してはさまざまな伝説がありますが、おもしろい話を挙げたいです。その話によると勇敢なキルギス人の若い男性たちが馬に乗って狼を追いかけて、棒で死にそうになるまで殴り、その狼をお互いに投げて遊んだということです。だんだん、ルールが次のようにできあがってきました。まず、狼の代わりに死んだ羊を使います。二つのチームに分かれ、馬に乗って羊を奪い合い、決まった時間に「カザン」という大きいなべの中にたくさんの羊を入れたほうが勝ちです。これは本当に乗馬が得意で、たくましい男性だけが参加できる試合です。祖母の話では曽祖父「コックビョリュ」の優勝者として有名だったそうです。曽祖父は背が高くて、がっしりした人で、溶かしたバターを飲んだり、生の馬脂を食べることができたそうです。子供の頃、曽祖父についての話を聞いて、とても誇りに思いました。そして、私はいつか「キズクーマイ」という試合に出ようと思って、夏休みに乗馬の練習を一生懸命しました。ところが、私は都会に住んでいたので、大人になって練習を続けることはできなくなりました。もし、今「キズクーマイ」のクラブがあったら、入ろうと思います。「キズクーマイ」というのは「女性を追いかける」という意味です。実際に何人かの男性が馬に乗って、数秒前に馬に乗って出発した女性を追いかける競技です。追いつけた男性が勝ちで、女性を自分の馬に乗らせて、彼女と結婚する許可さえもらったようです。力が強いからといって、必ずしも男性が女性に追いつけるとはかぎりません。例えば、十数年前、ある女性が乗馬が得意な人として選ばれ、「キズクーマイ」の全国大会に出場し、逃げ切ったそうです。「髪の長い美人が長い距離を誰にも追いつかれずに走りきった」という話を私も聞いたことがあります。

 最近、伝統的なスポーツに関心を持っている人がソ連の時より増加し、特別なスポーツ協会も設立されましたが、そのような協会がもっと積極的に活動することが必要だと思います。なぜかというと、まだ、子供向けの乗馬クラブが一つもないし、遠い地方に住んでいる若者はビシケクに伝統スポーツの協会があることを知らないからです。そのような地方の若者の中には能力があって、キルギスの伝統的スポーツの将来を担う人がいるでしょう。また、新聞によると、先頃せっかく競走馬として育てられた馬が売られたそうです。そのようなことも食い止めなければならないと思います。

 さて、伝統的なスポーツを発展させるためには、学校でも乗馬クラブを設立することが必要です。そして、ビシケクだけではなく地方にも伝統スポーツ協会の支部を開き、どんどん試合を行ったら、もっと上手な選手が出て来るはずです。もし、伝統的なスポーツを発展させるために特別な税金が必要であれば、私はもちろん他の人々も喜んで払うと思います。やはり、私たちはマナスの子孫として昔から大切に育てられて来た伝統的競技を失くすわけにはいかないと思っています。

 




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